
りそな銀行 コンシューマービジネス部 運用商品チームの熊倉雅仁氏が
”ユニークな先進国通貨“の秘密と魅力について、本誌「マーケットインサイド」の
連載でもおなじみのストラテジスト黒瀬浩一氏と下出衛氏に鋭く斬り込む
| 熊倉 | 最近、ベテラン投資家のお客さまの間で、米ドルに投資していた資金や手持ちの日本円を豪(オーストラリア)ドルにシフトするという動きが顕著になってきているのですが、そもそも豪ドルとはどのような存在なのですか? | ![]() |
| 下出 | 低金利の通貨でお金を借り、高金利の通貨に投資して利ザヤを得る手法を『キャリー・トレード』と言いますが、その際に最も活発に投資される対象が豪ドルです。 |
| 先進国通貨の中ではボラティリティ(価格変動率)が高いですが、エマージング(新興)諸国の通貨と比べると低い。近年のマーケット界では『リスク・オン、リスク・オフ』傾向(投資資金が一斉に一方向に動く傾向。オン=リスク性の高い資産へ、オフ=低い資産へ)が高まっていますが、そのオン・オフのバロメーターとされるのが豪ドルなのです。先進国でありながら資源国として新興国の側面も持つハイブリッドなオーストラリア経済を象徴する通貨といえます。 | |
| 黒瀬 | 日豪の政策金利の推移をご覧ください(図表@)。先進諸国はどこも財政赤字で苦しんでおり、オーストラリアも同じ問題がなくはないのですが今のところ、それが顕在化していません。現時点でオーストラリアの経済は、非常に堅調と言えるでしょう。 |
| 熊倉 | 先進国通貨なのに、豪ドルがなぜ高金利を維持できるのか。その要因は、やはり同国の経済構造にあるのでしょうか。 |
| 黒瀬 | そうですね。他の先進国との一番の違いは、オーストラリアが"資源大国"であるということ(図表A)。経済発展が進行する中国などのエマージングでは道路やビル建設のため、鉄やコンクリートを必要としており、同国は現在そのニーズの恩恵を受けているのです。 |
| 下出 | オーストラリアの輸出高の実に4分の1が、中国向けですからね。その分、中国経済の影響を受けがちになり、昨年は中国が金融引締めを行い景気が減速したため、同国の経済にも圧力がかかってしまいました。「インフレがピークアウトし金融政策は緩和の方向に向かう」という見込みが出てきたので、オーストラリア経済へのマイナスの影響は徐々に後退すると予想されます。 |
| 黒瀬 | ゼロ金利が続く日本では考えられないことですが、オーストラリアの物価上昇率は2〜3%。金利水準の違いの背景にはこの物価上昇率の高さがあります。"景気が良過ぎる"ということで同国は、ついこの間まで金利の引き上げをしていたくらいです。ただ、直近2回の中央銀行の政策決定会議では利下げが断行されています。これは明らかにアメリカ・欧州の景気悪化への対応策ですね。 |



| 熊倉 | 利下げが行われたということは、対円という面で考えると豪ドルは弱くなると予測すべきですか。 |
| 下出 | 今後も予防的な利下げが実施される可能性はあり、その際はいくらか豪ドル安の傾向となるでしょうね。しかし相対的に景気は底堅く、他の先進国のように大規模な金融緩和が行われる可能性は小さいと思われます。オーストラリアは、ユーロ圏のソブリン問題やアメリカ家計部門のバランスシート調整といった『深刻なバブルの後遺症』を直接的には抱え込んでいません。財政も先進国の中では健全で、大手格付け会社は最上位のトリプルA格を維持しています(注:2012年1月18日現在)。 |
| 黒瀬 | ヨーロッパの危機はまもなく、より深刻化すると予測されています。一方、アメリカの住宅バブル問題は今ようやく集中治療室から出たというレベルです。まだまだ重い病根を抱えている状態で、回復のためには財政と金融の両面の助けが必要となります。金融が何とかなっても財政は議会の承認が必要なため、しばらくは足踏みが続くでしょう。秋の大統領選前までは混乱が続き、その後は先行きの"不透明感"から投資活動が停滞する怖れがあります。 |
| 熊倉 | つまりユーロや米ドルは、大きな不安感を内包しているというのが現状なのですね。では、話題の豪ドルを実際に投資対象とする場合の具体的な戦略・戦術、注意ポイントなどを教えてください。預金のほか債券や保険など資金の運用法はさまざまで、戦略も短期と中長期で違ってくると思うのですが。 |
| 下出 | その商品は「どの投資期間で考えるべきか」を明確にして臨むべきでしょう。短期的リターンを期待するなら、目先の変動に注目しつつ値上がり益を期待する外資預金等を検討する。長期運用を考えるなら、債券や保険を豪ドル・ベースで購入して新興国の景気、資源需要の拡大サイクルに期待する、という具合に。 |
| 黒瀬 | とくに短期の場合は、先ほど出てきた『リスク・オン、リスク・オフ』傾向の面から考え、やはり投資のタイミングが重要となるでしょう。最近はオン・オフの間隔がけっこう短くなっていますから、常に"臨戦体制"で臨むべきです。欧州債務危機の進行具合、中国のバブルの行方、アメリカの財政政策の方向性など、さまざまファクターに注意深く監視の目を光らせておく必要がありますね。 |
| 下出 | 最後にもう一つ注意ポイントを。外貨建投資を考える際は、とかく相手国のことだけを考えがちですが、「自分の国の経済・金融政策がどうなるか」を考察に入れることも非常に大切なのです。たとえば日銀のゼロ金利政策ですが、これはアメリカが同じゼロ金利政策を続ける2013年中ごろまでは少なくとも続くと予想されます。また仮にアメリカがQE III(量的緩和第3弾)を実施した場合、円高進行を阻止する為に日本も追随して緩和を強化することが予想されます。実際、2010年秋にQE II(量的緩和第2弾)が実施された時はそうでした。他方、オーストラリアはQE II の実施期間中も引き締め姿勢を継続しました。通貨の変動に対する金融政策の感応度の違いを考えるのも、一つのアイデアだと思います。 |
| 熊倉 | よく分かりました。今後、投資に臨むお客さまにはアメリカ、欧州、中国、そして日本などの経済状況を考察しながら、このユニークな先進国通貨『豪ドル』に注目していただきたいものです。 |
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アセットマネジメント部 チーフ・マーケット・ストラテジスト
(国際公認投資アナリスト、ドイツIFO研究所調査員)


アセットマネジメント部 チーフ・ストラテジスト
(国際公認投資アナリスト、日本証券アナリスト協会検定委員)


コンシューマービジネス部
マーケティンググループ
運用商品チーム グループリーダー