
欧州債務危機の再燃で金融市場に動揺が広がっています。
その余波で日本やエマージング(新興国)でも株価は大きく下落、
円高となりました。
背景と今後の展望をまとめます。
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昨年末から今年の春先にかけて、世界の株価が大きく上昇するなど、欧州債務危機の解決に楽観的な見方が広がりました。イタリアのモンティ首相は3月に来日した際、イタリアなど欧州への投資を呼びかけるに際し、欧州債務危機対応は「収束しつつある」 と述べたものです。
しかし、欧州のこれまでの危機対応は、本質的に対症療法でした。病気の完治と投薬など対症療法による一時的な症状の緩和は、全く別物です。病気の完治は、病巣が消滅することを意味します。一方、投薬など対症療法による一時的な症状の緩和は、病巣を残したまま、苦痛などの症状を薬の効果で一時的に緩和するだけです。薬の効果が切れれば、苦痛などの症状が再発します。
一時的な症状の緩和を病気の完治と勘違いすれば、大変なことになります。昨年末にドイツのメルケル首相は新年向け演説で「2012年は間違いなく2011年よりも困難な年になる」と述べました。経済問題の見極めはいつも難しいものですが、この認識こそ、後から振り返ってみて正確だったということです。
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ギリシャやスペインなどが苦しむ欧州債務危機の病根とは何か。それは過剰債務です。債務が過剰か適正かは、返済可能かどうかで決まります。つまり過剰債務とは、返済できない借金なのです。過剰債務が問題となるのは当たり前です。債務者は、返済に四苦八苦することになります。同時に、貸した債権者も貸し倒れが避けられない事態となります。そこで過剰債務の現実的解決方法として、返済すべき金額と債権放棄(貸し倒れ)の金額を交渉するわけです。
ここで重要なのは、債権者と債務者は利害が対立することです。債権者にしてみれば、できるだけ多く返済してほしいと思うでしょう。逆に債務者は、返済する金額が少ないほうが負担は小さくて済みます。
最悪なのは、債権者と債務者の交渉がまとまらず、いわばケンカ別れのような格好で、債務者が一方的に返済を停止する事態が起こることです。現代経済では、債権者は銀行です。銀行が巨額の貸し倒れ損失を出す事態となれば、信用不安から取り付け騒ぎが起こることも考えられます。こうなると、信用秩序が崩壊して、社会全体で負う損失はエスカレートして増加していきます。
社会全体で負う損失が最も小さいのは、債権者と債務者が協力関係を維持して、返済できない債務の過剰部分をできるだけ少なくすることです。債権者は債権放棄により債務者の再生を支援する一方、債務者はリストラでできるだけ多く債務を返済します。
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これまでギリシャは、債権者と協力する格好で、返済できない債務の過剰部分をできるだけ少なくして、結果的に社会全体で負う損失が小さくなるように計画を進めてきました。債権者は債権放棄、債務者であるギリシャは国家リストラを進めてきました。
しかし、ギリシャは5月の選挙で事態が急変しました。国家リストラに対する国民の不満が高まった結果、債権者との協力関係を破棄しようとする急進左派連合などの勢力がかなりの票を得ました。協力関係の破棄は、ユーロ圏から追放される形での離脱につながる可能性があります。そうなれば、97年のタイバーツの暴落に始まったアジアの通貨危機のように、経済基盤の弱い東欧の国々が次々に通貨切り下げに追い込まれる可能性があります。春先以降の欧州発の金融市場の動揺では、この通貨危機のリスクが強く意識されました。今後のポイントは、債権者と債務国ギリシャが、お互いの負担割合を調整して、協力関係を回復できるかどうかです。6月の再選挙では、この協力関係の当面の維持が見込める結果となりましたが、まだ予断を許さない状況が続きそうです。ギリシャが最初に資金繰り支援を受けてから2年以上が経ちましたが、現状10年もの国債の金利は約30%あります。ギリシャは未だトンネルの先に明かりが見えない状況です(図@)。同様に、依然として先が不透明なのがポルトガルです。ポルトガルは、まだギリシャのような債権放棄は受けてはいません。しかし、10年国債の金利が12%もある事実は、1年以内に現行の債務返済計画が修正に追い込まれる可能性が高いことを物語っています(図@)。
そして新たに過剰債務が問題となりつつあるのがスペインです。スペインは、90年代の日本と類似の不動産バブル崩壊に見舞われました。過剰債務を抱えるのは住宅ローンを抱える家計や不動産開発を行ったデベロッパーなどで、債権者は銀行部門です。今後、銀行部門で生じる損失は、不動産価格の下落幅に依存することになりますが、かなり巨額になると見込まれています。早期に金融システムへの十分な規模の公的資金を注入しなければ、金融危機が生じるリスクがあります。また、国債10年物金利が危機の分水嶺とみなされる7%に迫っている事実は、銀行部門の金融危機と政府の債務危機が同時発生するリスクがあることを示しています(図@) 。スペインについては、稿を改めて取り上げさせて頂きます。

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1964年(昭和39年)9月5日大阪府出身。
87年慶應義塾大学商学部卒。りそな銀行アセットマネジメント部チーフ・マーケット・ストラテジスト(国際公認投資アナリスト、ドイツIFO研究所調査員)。投資戦略グループで資産配分に関するストラテジスト業務を担当。「変貌する世界の金融資本市場」(共著、きんざい)、日銀委託の共同調査論文、時事通信社発行の世界週報で「US経済ウォッチ」ほか多数執筆。
趣味:クラシックとオペラ鑑賞・陶磁器や漆器の酒器など骨董品収集
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