りそなグループ統合報告書2022

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財務担当執行役
メッセージ

執行役 財務部担当 太田 成信

2022年3月期決算の振り返り

2022年3月期は、コロナ禍が継続するなか、年度後半には、地政学的リスクが一気に高まり、米金利が上昇、円安が急速に進行するなど、変化の激しい1年となりました。こうしたなか、親会社株主に帰属する当期純利益は1,099億円となり、業績目標(1,450億円)を下回る結果となりました。

環境変化のスピードと深度を踏まえて、内在リスクを再評価し、早期に対応すべく、第4四半期に①外債を中心に有価証券ポートフォリオの健全化を実施したこと、②一部貸出先の債務者区分見直しに伴い与信費用を計上したことが、目標未達となった要因です。ガイダンス未達となった点は真摯に課題と認識しており、ポートフォリオ再構築に向けて有価証券運用の在り方をしっかりと議論するとともに、市場が安定するまでの間は、リスク量を抑えた運用を行う方針です。

一方、長らくの低下基調から2021年3月期に増益に転じた、「コア収益」(国内預貸金利益+フィー収益+経費)は、2022年3月期も前期比136億円の増加となりました。2021年4月に完全子会社化した関西みらいフィナンシャルグループ(KMFG)の貢献利益が大幅に拡大するなか、フィー収益はりそな発足来の最高益を更新、ベース経費の削減も進んでおり、収益・コスト構造改革は着実に進展しています。

環境変化への適切な対応(2022年3月期第4四半期) ◎ 有価証券ポートフォリオの健全化
  • 再構築に向けた柔軟性、さらなる金利上昇に備えた健全性を確保

    →第4四半期に関連損失として△550億円を計上

◎ 信用リスクへの対応
  • 一部貸出先の債務者区分見直しを実施

    →第4四半期に与信費用△381億円を計上

  • ロシア、ウクライナ、ベラルーシ向け与信:ゼロ

    →間接影響業種のスクリーニングなど、モニタリング強化

  • コロナ特例引当:2022年3月末88億円
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2023年3月期の見通し

2023年3月期の親会社株主に帰属する当期純利益の目標は、前期比401億円増益となる1,500億円、1株当たり普通配当予想は前期同水準の年間21円とさせていただきました。

現中期経営計画では、2023年3月期の親会社株主に帰属する当期純利益を1,600億円としていましたので、これに対しては△100億円下方の業績目標となります。これは、有価証券ポートフォリオの追加健全化コストや、当面のリスク抑制方針に伴う収益影響を勘案したことによるものです。追加健全化対応で、コスト先行となりますので、年度を通じてリカバリーを図り、業績目標をしっかり達成できるよう取り組んでいきたいと考えています。

業績目標の組み立てについて、銀行合算ベースでご説明します。業務粗利益は5,775億円で、前期比327億円の増加を見込みます。内訳として、国内預貸金利益は小幅な貸出金利回りの低下を見込み微減を想定する一方、フィー収益は、投資信託・ファンドラップ・保険を合算した資産形成サポート、不動産、M&Aなどの承継関連を中心に増加する組み立てです。その他業務粗利益の増加は、前年の有価証券ポートフォリオの健全化コストの反動減が主因です。

経費は、前期比82億円改善の△3,815億円を見込んでいます。人件費は前期比45億円改善、物件費は、料率改定に伴う預金保険料の減少を主因に、前期比50億円の改善を見込みます。今後も戦略投資は拡充する一方、ベース経費の削減を図ることで、経費をコントロールしていきます。

以上から、コア収益は前期比136億円の増加を見込むとともに、実質業務純益は前期比409億円の増加となる、1,960億円を目指します。

株式等関係損益(先物込)は、前期比110億円減少の360億円の計画です。取得原価ベースでの政策保有株式の削減は加速させますが、前期に含み益が大きい銘柄の売却があったことから、その反動減を織り込んでいます。

与信費用は、前期の大口先影響による引当増加の反動を主因に、前期比302億円改善の△310億円を計画しています。りそなグループ各行において、ロシア・ウクライナ向けの直接エクスポージャーはありませんが、長引く供給制約などから様々な経路でお客さまの事業に影響が及ぶ可能性があります。お客さまとの対話を深めながら、信用リスクの予兆管理強化と経営改善支援に努めていきます。

中計の主要経営指標(KPI)として「35%以上」を掲げている連結フィー収益比率は、2022年3月期実績34.6%から、2023年3月期は35%程度を目指します。連結経費率は、中計目標である「60%程度」に対し、2022年3月期実績が69.1%、2023年3月期は60%台前半までの改善を計画しています。

2023年3月期は、中期経営計画の最終年度となります。サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)、DX領域をはじめとするお客さまのこまりごとの変化に対応したソリューションの提供、グループ全体での基盤の再構築、KMFGとのシナジーのさらなる加速などを通じて、収益・コスト構造改革の進展をしっかりとお示ししていく考えです。

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  1. ※1国内預貸金利益+フィー収益+経費

政策保有株式の削減

当社は2003年の公的資金注入以降の財務改革のなかで、他社に先駆けて、約1兆円の政策保有株式を圧縮するなど、価格変動リスクの低減に努めてきました。

近年においても、さらなる圧縮に取り組んでいます。「2016年4月からの5年間で350億円を削減する計画」(△70億円/年ペース、前々計画)では、4年間で達成率が93%(削減額326億円)となったことから、2020年5月に前倒しで計画を刷新、「2020年4月から3年間で300億円を削減する計画」(△100億円/年ペース、前計画)として削減ペースを加速させました。

さらに、前計画においても、2年間で達成率が103%(削減額309億円)に達したことから、2022年5月に1年前倒しで計画を刷新し、「2026年3月末までの4年間で800億円の削減を目指す計画」(新計画)を策定・公表しました。年間の削減ペースは、△200億円/年となり、前計画の2倍に加速しています。なお、現状の当社ポートフォリオ全体の取得原価・時価の比率で試算すると、時価ベースでは4年間で2,500億円程度の削減計画となります。削減ペースをさらに加速させた新計画のもと、引き続き、残高縮減に取り組んでいきます。

今後、政策保有株式の縮減を通じて解放される資本につきましては、オーガニック、インオーガニックの両領域を通じて、「社会課題」「お客さまのこまりごと」解決に資する分野などで、しっかりと活用していく考えです。

削減ペースを2倍に加速させた新計画を公表(2022年5月)
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政策保有株式の議決権行使については、「議決権行使基準」を定め、全議案について個別に賛否を判断し、検証を行う仕組みを構築
  • 議決権行使基準にかかる基本的な考え方(議決権行使基準に記載)
政策投資で保有する株式の議決権行使は、以下の方針に則り、実施します。
  1. (1)お客さまとの取引上の利益に囚われることなく、持続的な企業価値向上の観点から、個別に賛否を判断するよう努めます。
  2. (2)特定の政治的・社会的問題を解決する手段として議決権行使はいたしません。
  3. (3)企業もしくは企業経営者等による不祥事及び反社会的行為が発生した場合には、コーポレートガバナンスの改善に資する内容で議決権を行使します。
  1. ※2ご参考:時価ベース2,500億円程度(2022年3月時点の当社政策保有株式の時価を元に試算)
CFO写真

税務に関する取り組み

りそなグループは、事業活動を行うすべての国および地域の税務に関する法令やその精神を遵守し、適切な納税責任を果たすことを基本方針としており、以下の「税務方針」を作成・公表しています。

税務方針
基本方針

りそなグループは「りそなSTANDARD(りそなグループ行動方針)」に基づき税務に関する法規制を遵守するとともに、適切な税務コンプライアンス体制の下で、適切に税金費用を管理し、企業価値の向上に努めます。

また、りそなグループは各国および各地域における税務に関する法令や国際機関等が公表する税務ガイドラインに基づき、りそなグループの各事業拠点における適切な税務コンプライアンスのために適正に行動します。

資本マネジメント

当社では、引き続き「健全性」「収益性」「株主還元」のバランス最適化を資本運営の基本方針としています。安定配当を維持しつつ、総還元性向の中期的な目標水準を「40%台半ば」としており、健全性・収益性とのバランスや成長投資の機会を考慮しつつ、さらなる株主還元の拡充を目指します。

健全性指標である普通株式等Tier1比率(バーゼル3最終化ベース、その他有価証券評価差額金除き)の2022年3月末実績は9.3%程度で、今年度末には9%台後半となる見通しです。また、収益性指標である株主資本ROEの2022年3月期の実績は5.63%で、今年度は7%台半ばを見込んでいます。前期実績、今期計画ともに内在リスクへの早期対応に必要となるコストを計上・想定したことから、株主資本ROEは中計目標である8%に届いていませんが、収益・コスト構造改革をさらに前進させ、収益力の底上げを実現するとともに、資本の効率的活用に取り組むことで資本生産性を着実に高めていく方針です。

株主還元につきましても、目標達成に向けた道筋をしっかりとお示ししていく考えです。昨年11月に実施した約100億円の自己株式取得は、こうした考え方に基づくものです。

当社は2003年の公的資金注入以降、2015年の公的資金完済も経て、資本の質を改善し、着実に資本の蓄積を進めてきましたが、ここにきて資本の活用・増強のフェーズに転換しつつあると認識しています。今後、さらなる企業価値の向上に向けて、資本の循環を加速させていきたいと考えており、次期中計を見据えながら、社内での議論を重ねていく考えです。

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  1. ※3バーゼル3最終化ベース、その他有価証券評価差額金除き
  2. ※4親会社株主に帰属する当期純利益÷株主資本(期首・期末平均)
  3. ※5KMFG完全子会社化に伴うEPS希薄化影響中立化を目的とした自己株式取得は除く

株主・投資家の皆さまとの対話

株主・投資家の皆さまとの建設的な対話も重視しています。当グループの経営戦略や財務状況などに関して、株主・投資家の皆さまから的確に理解され、信頼と正当な評価を得ることを目指すとともに、様々な議論をさせていただくことを通じて、当グループの持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図っていきたいと考えています。

2022年3月期はコロナ禍において、前年に引き続いて対面での対話機会は限定的なものとなってしまいましたが、デジタルを活用した対話機会の拡充を進めました。非対面のリモートツールを活用した面談を重ねるとともに、「オンライン株主セミナー」「個人投資家さま向けオンライン説明会」の開催、YouTubeでの個人投資家さま向け動画配信などを実施しています。

株主・投資家の皆さまからいただいた貴重なご意見は、定期的に取締役会などに報告し、経営戦略に反映するとともに、当社に対する市場からの評価や期待値などについての社内理解促進にも努めています。

当社では、GPIF選定ESG指数(国内株)への採用継続も中計の目標としていますが、SXへの取り組みなど非財務情報も含めてさらなる情報発信の充実を進めていきます。引き続き、情報の非対称性の解消を通じた資本コストの低減といったことも意識しながら、公平かつ公正な情報開示に努め、株主・投資家の皆さまとの建設的な対話の拡充を図っていきます。