りそなグループ統合報告書2026

CEOメッセージ

新たなカタチ
取締役兼代表執行役社長兼グループCEO
南 昌宏 Masahiro Minami

「新たなカタチ」をつくる

世界のカタチが、変わり始めています。

こうしたなかで、りそなグループは一つの意思決定を行いました。それは、新中期経営計画のもとで、金融の枠にとどまらない、「新たなカタチ」を探し続けるという決断です。

一方で、我々が拠って立つ本質は何ら変わることはありません。それは、常にお客さまに寄り添い、地域社会とともに歩み、そして、「金融+で、未来をプラスに。」というパーパスの実現を目指し続けることです。

日本経済は30年にわたるデフレを超えて、緩やかなインフレを前提とする新たな世界が動き始めています。社会・産業構造の変化、価値観の多様化、そしてテクノロジーの進化が加速するなか、お客さまの金融行動そのものが大きく変化していく時代を迎えています。

こうしたなかで、これまでの事業モデルを磨き続けるだけでは、持続的な成長は望めません。今後は、変化に適応するだけではなく、我々自身が変化そのものを創り出す主体となれるかどうか。今、グループとしての真価が問われ始めています。

当グループは、前中計を「CX(コーポレートトランスフォーメーション)に取り組む最初の1,000日」と位置づけ、価値創造力の強化と経営基盤の次世代化に努めてきました。こうした取り組みを通じて、稼ぐ力の再興や次世代に向けた経営基盤の整備は着実に改善してきたものの、まだまだ道半ばの状況にあります。もちろん、現状に安住することもありません。金融政策の正常化が進む今だからこそ、次世代に向けた収益構造の改革、リテール金融に内在する高コスト構造の打破、そして、インオーガニック投資を通じた新たな収益機会の獲得など、当グループが抱えてきた構造的な問題の解決に向けて踏み出すことが重要です。

120年を超えるリテール特化の歴史、2003年以降の再生と変革の歩み、そして、お客さまと向き合い続けてきた3万人の全従業員こそが、当グループの競争力の源泉です。こうした強みを礎に、3つの融合(①「金融」と「金融+」の融合、②「リアル」と「デジタル」の融合、③「人財」と「生成AI」と「データ」の融合)をキーワードとし、長期ビジョンに掲げる「リテールNo.1」の実現に向けて、新たな挑戦に踏み出します。

いかなる状況にあっても、変化を恐れることなく、未来を切り拓く。私自身がその先頭に立ち、当グループの次世代の「新たなカタチ」、「新たな勝ち筋」を確立していくことが、グループの経営トップとしての私の責任であり、覚悟です。

パーパスは、すべての起点。最終的なゴール

2026年から新中期経営計画「Shift to the Next Stage ― 新たなカタチをつくる3年間 ―」が始まっており、その先にある長期的に目指す姿として、長期ビジョン「リテールNo.1」やパーパス「金融+で、未来をプラスに。」があることを示した図

当グループが掲げるパーパス「金融+で、未来をプラスに。」は、単なる理念やスローガンではありません。パーパスは、社会に提供するすべての価値の出発点であり、我々が目指す最終的なゴールでもあります。

当グループが目指すのは、①活力あふれる社会、②豊かで幸せに暮らせる社会、そして③次世代へとつながる持続可能な社会です。そして、社会がどのように変わっても、誰もが安心して前を向き、希望を持って一歩を踏み出せる社会の実現に貢献していくことです。お客さまの未来を少しでも豊かにし、地域社会に安心と希望を届け、社会課題の解決に真正面から向き合うこと。これが、我々の存在意義です。

「金融+」とは、金融を離れることではありません。金融が持つ本来の力を、より広い文脈のなかで最大限に活かすことを意味します。金融を基軸に、我々にはない知見やノウハウ、商品やサービスはもとより、AIやデータ、さらには地域とのネットワークを掛け合わせることで、これまでの金融では届けることができなかった新たな価値を創出し、お客さまの日常と地域社会の未来に新たな可能性をもたらすことです。また、我々は、社会課題への対応を、決して「付加的な活動」とは考えていません。お客さまのこまりごとや社会課題の解決に向けた取り組みは、我々の本業そのものであり、社会に新たな前進をもたらすための原動力だと考えています。

また、パーパスは、従業員だけのものではありません。お客さま、地域社会、企業や株主・投資家の皆さまと共有され、社会のなかで共感されてこそ、さらにその輝きを増します。

我々は、2003年以降の長い歩みのなかで、希望を持って変革と挑戦の道を歩み続けることの大切さを学んできました。長期ビジョンとして掲げる「リテールNo.1」とは、単に収益や規模でトップバンクになることを目指すものではありません。その本質は、国内の中堅・中小企業・個人のお客さまから、圧倒的な支持をいただくことです。そのために、我々は、これまでの常識や価値観に過度にとらわれることなく、これからも変革と挑戦の道を歩み続けます。

マテリアリティは、経営の意思決定の軸

今回、新中計を検討する出発点として、あらためて、マテリアリティの見直しを行いました。もちろん単なる社会課題の整理ではありません。パーパスから連なり、我々が描く「実現したい未来社会」からバックキャストしたうえで、優先的に取り組むべき領域と自ら克服すべき課題を明確化したものです。

また、中長期的にどのような課題と向き合い、経営資源を配分し、いかに社会価値と経済価値を両立させていくのかを示す経営の意思決定の軸を再確認するためでもあります。

「実現したい未来社会」と、6つのマテリアリティの対応関係を示した図 見出し「マテリアリティは、経営の意思決定の軸」の下で説明しています

我々は、①産業成長による地域社会の発展・活性化、②次世代リテール金融の創造、③少子高齢化社会での生活の安心と豊かさの実現、そして、④将来世代にわたる豊かな未来社会の実現、という4つの領域を中核に価値創造を進めます。そして、この「実現したい未来社会」に向けた歩みをさらに加速させるために、①人的資本の強化と②強固なガバナンスの確立という、経営基盤に関する2つの課題についても、あらためてマテリアリティとして位置づけたうえで、さらなる進化を目指していきます。

今回、マテリアリティの改定にあたって強く意識したことは、マテリアリティとビジネスの関係性と、その時間軸です。まず、5年後、10年後の社会・お客さまのあり様やその変化を見据え、当グループが持つ本源的な強みを再認識したうえで、我々が事業を通じて貢献したい領域を明確化しています。そのうえで、社会関係資本の拡充、人的資本・知的資本の高度化、財務資本の最適な活用を通じて、グループの競争力や価値創造力の向上を目指します。

とりわけ、人的資本は我々のビジネスのすべての出発点です。テクノロジーがいかに進化しようとも、お客さまの変化に最初に気づき、こまりごとに深く寄り添い、最終的にソリューションを最適化していくのは人財です。もちろん、生成AIやデータは、人の可能性を拡張するための手段として特筆すべきものですが、人が持つすばらしさを代替するものではありません。一方で、人財と生成AIやデータの融合がもたらす果実は、今後のグループの競争力そのものを大きく左右していくと考えています。だからこそ、グループをあげた戦略的な取り組みが不可欠であり、従業員一人ひとりが学び、挑戦し、成長を目指すための環境を整備していくことも重要なポイントだと考えています。

いずれにしても、マテリアリティは、単なる方向性ではなく、我々の明確な意思と覚悟です。これからも経営の中核に据え、すべての意思決定、資源配分、リスク判断にしっかりと反映させていきたいと考えています。

新中期経営計画は、「新たなカタチ」をつくる3年間

2026年度より、新たな中計「Shift to the Next Stage ― 新たなカタチをつくる3年間 ―」をスタートさせました。事業環境が大きく変化していくなかで、金融の枠を超えて、自ら変化を創り出し、「新たなカタチ」の創造に挑む3年間と位置づけています。

前中計期間は、金融政策の正常化が進むなか、円滑な資金提供はもとより、お客さまのこまりごとを起点とする多彩なソリューション提供にグループをあげて取り組んできました。こうしたなか、資金利益とフィー収益の2つのエンジンを中心とする「稼ぐ力」の再興に加え、もう一つの柱である構造改革にも粘り強く取り組むことで、りそなホールディングス連結の当期純利益は、13期ぶりに2,500億円を超えて着地しています。

新中計は、こうしたよい流れを継承しつつ、実質的な過去最高益の更新を視野に入れています。2003年以降、時間はかかりましたが、一つの通過点として過去を超え、長期ビジョンとして掲げる「リテールNo.1」の実現に向けて新たな挑戦に踏み出します。

新中期経営計画の主要財務目標
業務粗利益
1兆円
東証ROE
12
OHR ※1
40%台

※1 連結経費率

トップライン1兆円、ROE12%、OHR40%台といった財務目標は、お客さまへの価値提供力をさらに高め、次世代に向けた構造改革を進めながら、まずは計画期間中に早期に辿り着きたい水準感として掲げたものです。

本計画は、3つの柱から構成されています。

第一の柱は、「コア事業の成長」です。日本経済が再成長に向けて大きな転機を迎えるなかで、円滑な資金供給、高度なソリューションの提供などを通じて、日本の成長と地域経済の活性化を持続的に支え続けることは、当グループの存在意義であり、新中計の核心でもあります。こうした取り組みを力強く支えていくために、ALM運営の高度化・質的強化が重要な局面です。具体的には、安定的で粘着性の高い預金基盤の維持・拡大を図りながら、時代の変化に合わせた運用利回りの適正化に取り組んでいきます。同時に、ソリューション力のさらなる強化や金融デジタルプラットフォームの拡充などを通じて、リカーリング型・ストック型を含む非金利収益のさらなる拡大を図ることで、5年後、10年後に向けて、金利環境に過度に依存しない収益構造への転換を目指していきます。

第二の柱は、「次世代成長ドライバーの創出」です。変化の時代に、これからも選ばれ続ける金融グループであるためには、お客さまの多様化・高度化・複雑化するニーズを適切かつスピーディーに満たし続けていく必要があります。そのためには、当グループのさらなる成長を支える新たな知見やノウハウ、機能やサービス、顧客基盤・ケイパビリティの獲得・強化が不可欠だと認識しています。

そのうえで、「金融」と「金融+」の融合をキーワードに、新たな顧客体験の創出、これまでにないお客さまへの価値提供を目指します。

その一例として、戦略的業務提携を結ぶデジタルガレージとの関係では、決済領域やデジタルマーケティング分野での連携強化はもとより、フィンテックをはじめとする新分野での幅広い協業を加速させていきます。当グループが持つお客さま基盤や金融機能と、デジタルガレージが持つテクノロジーや幅広いネットワークを融合させることで、「金融+」につながる「新たなカタチ」を追求していきます。

また、本年5月、りそなグループとJR西日本グループの資本業務提携を公表しました。関西地域を中心とするお客さまへの、「移動」「くらし」「金融」が一つにつながる新たな顧客体験の提供を目指します。地域価値循環型のBaaS機能の展開・決済機能の拡充、まちづくりの推進を掲げていますが、マザーマーケットの一つである関西の地に、新たな選択肢を提供したいと考えています。

そして、同じく5月には第一ライフグループ、JCBとの協業による個人向け新サービス「りそなプラス」を公表しました。これは、「金融」と「くらし」の融合をコンセプトとして、日々のくらしを起点に、お客さまにこれまでにない「便利さ」「お得さ」「安心感」を提供するための新たな挑戦です。個人のお客さま、加盟店・事業者の皆さま、地域社会をつなぐ新たなエコシステムを構築し、お客さまのくらしをより豊かなものとしていきます。

そして、こうした取り組みは、これまで強化してきた金融デジタルプラットフォームが、新たな局面を迎えることを意味しています。これからも、金融の枠を超えた異業種のパートナーとの連携などを通じて、より魅力的で競争力のある金融プラットフォームへの進化を目指します。

第三の柱は、「経営基盤の構造改革」です。構造改革とは、CXを指しています。これは、経営基盤そのものの本源的なアップデートであり、時代の変化に適応した強靭な企業へと進化するための新たな挑戦です。特に、「人財」×「生成AI」×「データ」の高度な利活用が重要であり、こうした取り組みの強化が、顧客体験を変え、お客さまに新たな価値を提供するとともに、グループの生産性のさらなる向上につながっていきます。そして、社内DXや業務プロセスの解体・再構築を通じて、長きにわたって固定化されてきた経営資源の本格的な再配分が始まります。具体的には、人財をお客さまとの接点や新たな収益機会の担い手へとシフトさせていきます。一方で、生成AIの利活用に際しては黎明期であり、AIガバナンスのもと、安心と安全を前提に実装を進めていきます。

こうした3つの柱、①コア事業の成長、②次世代成長ドライバーの創出、③経営基盤の構造改革から導出される果実を、グループ企業価値の最大化に向けた資本循環へとつなげていきます。健全性の維持はもとより、オーガニック・インオーガニック双方による成長投資、株主還元にバランスよく取り組んでいきます。そして、資本を有効に活用し、循環させ、さらなる成長投資と拡大再生産へとつなげることで、持続的な企業価値向上を目指します。

持続的なROE・企業価値の向上について示した図 2026年3月期の実績は9.2%で、2029年3月期の計画は、政策金利が1.0%の場合はROE12%、政策金利が1.5%の場合はROE14%を目指す

新中計においても、引き続きROEの向上、資本コストの低減双方から市場評価としての企業価値向上を目指します。新中計においては、政策金利1%を前提にROE12%を、仮に政策金利が1.5%まで上昇したケースではROE14%を目指します。また、資本コスト低減の観点からは、リスクを適切にマネージしつつ、ステークホルダーの皆さま方の期待に応えられるよう、質の高い、安定的な収益構造の構築を急ぐとともに、さらなる成長の姿を示したいと考えています。さらに、サステナビリティにかかる取組強化とあわせ、当グループの持続可能性を幅広くご理解いただけるよう、財務・非財務双方の開示の拡充につきましても、積極的に取り組んでいきます。

私がつくる「新たなカタチ」

経営者としての私の役割は、当グループの価値創造の在り方を時代とともに進化させ、企業価値の最大化を実現することにあります。

過去の成功体験に安住することなく、外部の優れた知見とつながり、時代の変化を見極めながら、「このままでよいのか」と、自らに問い続ける姿勢を大事にしていきたいと考えています。そして、これまでの価値観や常識に過度にとらわれることなく、変化のその先を見据えながら、金融の枠を超えた、「新たなカタチ」、「新たな勝ち筋」の創造を目指します。

一方で、時代がいかに変わろうとも、我々が守るべきものがあります。それは、インテグリティを礎に、「良き企業」を目指す姿勢、お客さまのこまりごとに寄り添い続ける姿勢、地域社会とともに歩み続ける姿勢、そして、「お客さまの喜びがりそなの喜び」という変わることのないグループの原点を守り抜くことです。

新中計は、当グループが次のステージに向かうための羅針盤ですが、真の価値を生み出すのは、3万人の従業員一人ひとりの意思とやり切る力です。そして、その一つひとつの積み重ねが組織の能力を引き上げ、商品・サービス・機能を進化させ、我々が目指す「新たなカタチ」へとつながっていきます。

当グループは、日本の成長と地域の活性化を力強く支える金融グループへと進化していきます。そして、「金融」と「金融+」の融合、「リアル」と「デジタル」の融合、「人財」と「生成AI」と「データ」の融合という3つの融合を通じて、これまでの金融の枠を超えた「新たなカタチ」の創造を目指してまいります。

たくさんの安心と希望、そしてワクワクする未来のために、りそなグループは、これからも変革と創造に挑み続けます。今後も、変わらぬご支援とご鞭撻をいただけますよう、よろしくお願いいたします。

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