りそなグループ統合報告書2026

社外取締役座談会

社外取締役
監査委員会委員長・報酬委員会委員
田中 克幸
Katsuyuki Tanaka (写真左端)
社外取締役
取締役会議長
山内 雅喜
Masaki Yamauchi (写真左から2人目)
ピクテ・ジャパン シニア・フェロー/
名古屋商科大学大学院 教授
大槻 奈那
Nana Otsuki (写真中央)
社外取締役
指名委員会委員長
岩田 喜美枝
Kimie Iwata (写真右から2人目)
社外取締役
報酬委員会委員長
野原 佐和子
Sawako Nohara (写真右端)
大槻 奈那
国内外の金融機関、格付機関、証券会社において金融セクターの調査・分析に長年従事。外資系証券では銀行アナリストとして高い評価を獲得。現在はピクテ・ジャパン シニア・フェロー、名古屋商科大学大学院 教授を務めながら新聞・TVなどのメディアでも活躍し、金融・資本市場に関する発信を続けている。

パーパスの実現に向け長期視点で描く新中期経営計画

大槻

りそなグループでは、2026年4月に新たな中計がスタートしました。パーパスの実現に向け、長期ビジョンをイメージし、長期視点に立つマテリアリティの改定と3年間の新たな中計の策定をされたと認識していますが、皆さんからの振り返りをお願いできますか。

山内

一言で申し上げると、長期的な目線から「バックキャスト」し、この3年間で取り組むべき方向性を明確に描けたと感じています。りそなグループは「金融+で、未来をプラスに。」というパーパスと、それを実現するための長期ビジョン「リテールNo.1」を掲げています。今回は1年以上の長い期間をかけ、ステークホルダーの皆さまにりそなグループの目指す方向性をしっかりと理解してもらえるよう、その解像度を上げる議論を深めることができました。

岩田

私自身、りそなグループで中計策定に携わるのは3回目ですが、今回がもっとも充実した議論ができたと感じています。理由は2つあって、1つは、山内議長もおっしゃったように長期的に見たありたい姿を描き、そこからバックキャストしたということ。もう1つは、グループ銀行の計画の積み上げではなく、りそなホールディングスの視点からグループ全体の姿を描けたことです。

パーパス「金融+で、未来をプラスに。」については、「金融+」とは何か、「未来をプラスに」とはどうすることかを取締役会で繰り返し議論したことで、単なるキャッチフレーズとしてではなく、高い解像度で私たちが実現すべきこと、そのためにこれから行っていくことの整理ができました。

特に「金融+」の「+」については、中核となるビジネスを深掘りすることによる成長余地に関する議論に加え、既存領域から派生する領域・飛び地となる領域を「次世代成長ドライバー」と位置づけ、その具体像を明確にしました。また、グループ会社が、この「次世代成長ドライバー」を担う役割を持つことを議論したことも、グループ全体を見るうえで大きな意義があったと認識しています。

なお、今回策定した中計は、取締役会で半年ごとにしっかりと進捗確認を行うこととしています。モニタリングを意識した中計が策定できたという点も、従来になく画期的だったと評価しています。

野原

中計策定の議論のなかで、私たち社外取締役から執行側に対して、「10年後、20年後のりそなグループが目指す姿」や「次世代成長ドライバーとは具体的に何を示すのか」といった問いを何度も投げかけました。中計のコンセプトは定めたものの、具体的な進め方がなければ絵に描いた餅になってしまう恐れがあります。執行側が私たち社外取締役の意見を真摯に汲み取り、何度も深い議論を繰り返した結果として、説得力のある中計になったと評価しています。今後は進捗状況をしっかりとモニタリングしていくことで、新中計の達成に貢献していきたいと思っています。

田中

私は就任して3年経ち、今回が初めての中計策定でしたが、執行側から事業を取り巻く環境について、金利ある世界の復活や、人口動態、フィンテックをはじめとした環境変化や他社との協業の状況・考え方などについて共有を受け、議論を交わしてきました。また、中計策定のなかで、りそなホールディングスとグループ銀行との間で十分にストロークを行うことができた点を評価しています。グループ銀行各社の特性を踏まえ、資本や人財をどのように配賦すべきか、グループとして最適な形を求めて綿密なストロークを行い、その過程が我々社外取締役にもわかるように提示されました。実りある議論を経て、中計として形に残すことができたと感じています。

次なる成長ステージへの勝ち筋と「金融+」を通じた戦略

大槻

金利をはじめ事業環境が大きく変わるなか、日本の金融機関に関心を持つ投資家が増加していることは、りそなグループにとってチャンスでもあると思いますが、取締役会で共有されている課題認識や、中長期的な観点を踏まえた危機感についてお聞かせください。

山内

環境変化による大きな転換期において、メガバンクでも地方銀行でもないりそなグループ独自の勝ち筋を明確にし、それを実行に移していくことが求められていると認識しています。りそなショックを経て、例えば人的資本という面では、専門的な人財の確保が追いついていない状況も見受けられます。また、限られた経営資源を活用し、外部との連携などを進めることでビジネスを拡大し、大きな成果に結びつけていかなくてはならないという課題認識も持っています。これから「金融+」を実現していくためには、様々な人財、機能を備える必要があり、危機感を持って対応を検討していかなければなりません。

大槻

中長期的にりそなグループが成長を遂げていくうえで、今、お話に出ました外部との協業も不可欠かと思います。外部の力との融合で実現されたい10年後、20年後のあるべき姿はどのようなものとお考えでしょうか。

野原

外部連携で実現したい将来像の一例が、JR西日本との資本業務提携です。機能提供にとどまらず、良質な顧客基盤を増やしながら、「次世代成長ドライバー」の創出と「コア事業」の成長を両立させる、これがまさに「金融+」の一つの事例であると考えます。

長期ビジョンの「リテールNo.1」の理念体系には「お客さま・地域社会にもっとも支持され、ともに未来へ歩み続けるソリューショングループ」と記載されています。まさに外部との提携によって、ソリューションを数多く生み出していくグループになりつつあり、着実に取り組みを進めていると評価しています。

大槻

成長投資にも関連するところで、投資規律の観点からお伺いします。成長投資や事業提携を進めていくうえで、同時に冷静で適切な判断も求められると思います。案件の採択を見送る判断や、その結果としての機会損失については、どのような考え方を持っていますか。

田中

投資案件については、場合によっては案件が固まる前の早い段階から情報提供を受け、取締役会で議論しています。インオーガニック投資においては、グループが持つべき機能として不可欠かどうかといった点や、その場合にどこが提携先としてふさわしいのかといった観点を持って議論しています。M&A案件の審議では、会計上・法務上の論点や、投資を実施した場合の資本的な制約への考慮、そして経営へのインパクトの程度など、整理された資料を執行側が準備し、それをもとに各取締役から様々な意見が示されます。その結果として、見送る判断をしたケースもあります。

りそなグループの課題を克服し、強みをつくっていくという観点で成長投資を検討しており、採択にあたっては十分に議論が尽くされていると感じています。

大槻

成長投資について、取締役会でも様々な議論を重ねてこられている様子がよくわかりました。一方で、総還元性向目標を「50%以上」とされていますが、成長投資と株主還元のバランスについて、お考えをお聞かせいただけますか。

岩田

りそなグループは、総還元性向目標を「50%以上」と掲げ、資本の半分を株主・投資家の皆さまへ還元することとしていますが、ここで重要なことは残りの資本をどのように活用するかです。将来を見据え、人財やITシステムへの投資も含めたオーガニック投資、そして「金融+」の成長の道筋であるインオーガニック投資、それぞれを力強く進めていく必要があります。2年前にリスクアペタイト・ステートメントを策定したことで、「とるべきリスク」と「回避すべきリスク」が整理されており、これから成長ステージへと進むにあたり、経営者のマインドが変化してきていると感じています。適切にリスクテイクができるよう、取締役会として後押しできる環境を構築し、支えていきたいと考えています。

山内

株主還元を充実させていくためには、成長投資もしっかりと行い、株主還元の原資となる利益を、着実に上げていくことが大切だと考えています。りそなグループは過去の経緯から、投資に慎重な側面もありますが、この中計は考え方を大きく転換させるタイミングでもあると捉え、取締役会としても、後押ししていきたいと思っています。

マテリアリティの改定と取締役の専門性発揮

大槻

中計策定時にマテリアリティを再定義するということは重要だと感じています。取締役会で議論し策定した中計と、改定したマテリアリティについて、皆さまがお考えの訴求ポイントや特長を教えてください。また、どのような点に「りそならしさ」が表れているとお感じでしょうか。

山内

りそなグループのパーパスにある「未来をプラスに」という枠組みのなかで、例えば、「豊かで幸せに暮らせる社会」を構築していくために私たちに必要なものは何なのか、りそなが世の中でどのような役割を果たしていくか、という本質的な議論を重ねたことが、今回のマテリアリティ改定につながっていると考えています。

「りそならしさ」という観点では、長期ビジョン「リテールNo.1」を掲げ、個人の豊かな生活と、地域や企業の成長・発展を実現すること、これが結果的にあらゆるステークホルダーの幸せにつながるという当社の社会に対する大きな役割を、あらためて確認・明示できたことは、重要なポイントだと捉えています。

野原

6つのマテリアリティのうち、優先的に取り組むべき領域として定めている4つのマテリアリティについては、りそながどのような事業領域を見ているかを表していますが、「りそならしさ」という意味では、その基盤となる人的資本の強化やガバナンスの確立をここに明記したことが特長的です。今後はこれらに注力することがさらに重要になると捉えています。

大槻

マテリアリティの改定に伴い、「取締役に期待するスキル」も変更されていますが、皆さまお一人おひとりはどのような点で強みを発揮できるとお考えでしょうか。

岩田

今回改定した「取締役に期待するスキル」の最大の特長は、コア事業の成長を担う「金融」と、次世代成長ドライバーの創出を担う「事業開発」という2つの項目を新たに入れたことです。私個人に期待されているのはサステナビリティや人的資本の領域ですが、まったく異なる業種での経営経験から、金融業界やりそなグループを相対的・客観的な視点で見ることが重要だと考えています。社内では常識的なこととして受け入れられていることでも、外部の視点から見ると当たり前ではない点を指摘することが、私の役割だと認識しています。

田中

私は、監査委員として財務の健全性を見極める役割を期待されていると認識しています。弁護士として過去に金融機関が経営危機に至った原因の調査にかかわった経験から、銀行の安全性や健全性に直結する領域に強い関心を持っています。一方で取締役会では、施策やビジネスが本来の目的と整合しているかなど、より本質的な視点を大切にして、積極的に意見を述べたいと考えています。

ガバナンスの実効性向上と各委員会の取り組み

大槻

続いて、各委員会の委員長というお立場からのお話を伺いたいと思います。まずは岩田指名委員長にお伺いします。今年度、3つのグループ銀行(りそな銀行、埼玉りそな銀行、関西みらい銀行)の社長交代が行われ、りそなホールディングスにおいても代表権を有する副社長が2名、取締役として選任されました。今年度の役員人事についてポイントを教えてください。

岩田

金融業界を取り巻く環境が改善していること、新中計が開始されたこと、3つのグループ銀行において社長の在任期間が一定程度経過したこと、後継者が着実に育成されていること、などを総合的に判断し、グループ銀行の社長を交代する最適なタイミングだと判断しました。また、りそなホールディングスに新たに2名の代表執行役副社長を配置した理由としては、中計の策定において主体的かつ中心的な役割を果たしてきた伊佐副社長、岩舘副社長の両名にそれぞれの強みを発揮し、策定した中計を強力に推し進めていただくことを期待したためです。また、今回初めてグループCHROをホールディングス専任としたことで、グループ全体を俯瞰した人財戦略の議論が進められると考えています。

さらには、取締役会や指名委員会、報酬委員会の運営などを担うコーポレートガバナンス事務局の一層の機能強化を目的に、代表執行役副社長を担当役員とする体制としました。これにより、コーポレートガバナンスとグループ戦略との一体性をより高めていきたいと考えています。

大槻

取締役会では、各委員会との連携をどのように図っていらっしゃるのでしょうか。

山内

当社は指名・報酬・監査の各委員会を独立性高く運営していますが、全体戦略と連動した動きを取れるよう、取締役会議長と指名・報酬・監査の各委員会の3委員長による情報交換・意見交換の場を定期的に設けています。各委員会で認識している経営課題を共有することで、社外取締役の実効的な関与のもとで、横串を刺した検証を行うことが可能となっています。

大槻

続いて野原報酬委員長にお伺いしたいと思います。経営戦略を実現していくうえで、役員報酬が果たす役割は極めて大きいと考えますが、中計の策定に合わせて改定された役員報酬制度の基本的な考え方やポイントについて教えていただけますでしょうか。

野原

制度改定の大きな考え方としては、新中計の経営戦略を牽引する役員を適切に評価し、施策の強力な推進を後押しするインセンティブとして機能させるということです。ポイントは大きく3点です。

第一に、報酬方針に「中長期的な企業価値向上に向けた積極的な取り組みを後押しする」と明記し、過度なリスクを抑えつつも積極的な挑戦を支援する姿勢を明確にしました。第二に、新中計のKGI・KPI、マテリアリティKPIなどを踏まえて評価指標を改定し、経営戦略の進捗が報酬にしっかりと反映される仕組みとしました。第三に、他社水準などを踏まえつつ、これまで以上にりそなホールディングス社長をはじめとした役員の職責が重くなることを踏まえ、報酬を適正な水準へと引き上げました。

大槻

ありがとうございます。最後は田中監査委員長にお聞きします。戦略の実現には、それを支える経営基盤や健全な企業文化が極めて重要だと考えています。監査委員会では企業価値向上に向けて、どのような役割を果たしていくお考えでしょうか。

田中

例えば年1回、全グループの従業員を対象としたコンプライアンスに関する意識調査および従業員意識調査を実施しています。自由意見欄に記載された内容は原文のまま監査委員会に直接レポートが入る仕組みを構築し、従業員の声のなかから重要な内容をピックアップして議論を行っています。健全な企業文化の維持・醸成という観点からもしっかりと監査委員会がその役割を果たせるようにしていきたいと考えています。

大槻

監査委員長にもう一点お聞きします。成長投資に資源をより多く配賦することになれば、資本コストが上昇するリスクもあると思われます。そうしたリスクに対する管理体制などについて、監査委員会ではどのような議論を行っていますか。

田中

監査委員会としては、資本コストの水準そのものを見るのではなく、成長投資の拡大や金利環境の変化を踏まえ、経営の意思決定プロセスとリスク管理体制が適切に機能しているかをモニタリングしています。具体的には、資本効率の観点からの過度なリスクテイクの抑制状況、成長投資の妥当性としての投資リターンの確保状況、そして企業価値向上の観点からのグループ全体の資本配分の適切性について継続的に議論しています。

また、内部監査部門・リスク管理部門・財務/企画部門・ビジネス部門と定期的に意見交換を行い、プロセスの実効性を確保することで、成長とリスク管理のバランスを保ち、持続的な企業価値向上につながるようにモニタリングを行っています。

山内

監査委員会はグループの各社社長との定期的な意見交換に加え、りそなホールディングスのCxOを中心に課題と対策を確認し、経営としてなすべきことが確実に実行されているかを検証しています。こうしたプロセスを通じて、監査機能を適切に果たしています。

株主・投資家の皆さまへ

大槻

最後に、株主や投資家の皆さまへ向けたメッセージをお願いいたします。

山内

まず、「これからのりそなを楽しみにしていただきたい」とお伝えしたいと思います。今回の中計やマテリアリティが示す通り、当社は新しい成長ステージに踏み出しました。金利のある世界が戻り、「金融+」として提供できる領域が広がる今は、当社にとって極めて重要な機会です。具体的な勝ち筋も社内で共有できており、大いに期待していただいてよいと確信しています。皆さまにはその歩みを見守っていただきつつ、私たちも経営の監督をしっかりと果たしていきます。

岩田

前中計以降、りそなグループは確実に変わり始めています。市場からの評価も高まるなか、今回の中計でどこまで成長できるか、中計を確実に実行し成果を創出できるかに期待していただきたいです。一方で、成長が順調な時期ほど組織の弱みや構造的課題が見えにくくなるため、業務プロセスの見直し、ワークスタイル変革、システムセキュリティ対応など、これまで解決しきれなかった課題に取り組む必要があります。私たちもこうした構造的課題に目を光らせつつ、引き続き市場の皆さまにご注目いただきたいと考えています。

野原

「新たなカタチをつくる3年間」というテーマのもと、次世代に向けた様々な施策を見込んでおり、株主・投資家の皆さまにはその点にご期待いただき、継続的なサポートをお願いしたいと考えています。目標を高く掲げるだけでなく、実効性をどう担保し、企業価値向上につなげるかについて、私たち社外取締役がしっかりと経営をモニタリングする必要があります。データを活用してりそなグループの成果を定量的に把握することに加え、個別の投資案件や重要プロジェクトの進捗をしっかりと確認することが重要だと認識しています。

田中

当社はメガバンクでも地方銀行でもない独自のポジションにあります。その立ち位置を活かして、我々が強みを発揮する地域に高度なソリューションを提供する仕組みを確立したいと考えています。過去を振り返れば、資本の制約があったなかでこそ生まれる様々な知恵があったと考えています。そうしたなかで培われてきた「りそならしさ」にも注目していただきたいと考えています。

大槻

りそなグループは業界においてもユニークなポジションを有しており、新たな成長への期待感を市場から得やすい存在であると考えます。皆さんが示された「りそなグループのあるべき姿」と、策定された中計はすばらしいものであり、高く評価しております。今後はそれを適切にモニタリングし、市場の要望に応え、さらにはそれを上回るような成果を示していただけることを願っています。本日は誠にありがとうございました。

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