2026年4月より、グループCSO、グループCSuO、グループCHROとして、サステナビリティ、人財、ガバナンスを経営戦略のなかで一体的に捉え、マテリアリティを成長戦略として実装する役割を担っています。
りそなグループは、新たな中期経営計画「Shift to the Next Stage ― 新たなカタチをつくる3年間 ―」のスタートに合わせて、マテリアリティを見直しました。
これは、単に社会課題を整理し直したものではありません。パーパス「金融+で、未来をプラスに。」に込めた、私たちが実現したい未来社会と、その実現に向けた行動を起点に、当グループがどの領域で価値を創出し、その実現に向けて自ら何を変えていくべきかを明確にしたものです。
私たちは今、価値創造の在り方そのものを進化させる局面にあります。求められているのは、変化に対応することにとどまらず、社会課題やお客さまのこまりごとを成長機会と捉え、当グループの価値提供の在り方、収益構造、経営基盤を一体として進化させていくことです。
私が、戦略、サステナビリティ、人財、ガバナンスを横断して担う立場として重視しているのは、この変革を一過性の取り組みで終わらせず、経営の仕組みとして実装することです。
お客さまのこまりごとや、その背景にある社会課題を起点に、従来の枠組みを超えた新たな価値を生み出していく。それを実行する人財と組織を育て、挑戦を支える規律あるガバナンスと結びつける。その一連のつながりを経営のなかに組み込むことが、新たなマテリアリティを実効性あるものにするために不可欠だと考えています。
マテリアリティを判断軸に使い続ける
今回のマテリアリティは、4つの価値創造領域と、2つの経営基盤課題で構成しています。
「産業成長による地域社会の発展・活性化」「次世代リテール金融の創造」「少子高齢化社会での生活の安心、豊かさの実現」「将来世代にわたる豊かな未来社会の実現」という4つの領域は、当グループがどこで社会価値と企業価値を同時に生み出していくのかを示すものです。
一方で、「人的資本の強化」と「強固なガバナンスの確立」は、それらの価値創造を実行し、持続的な成果につなげるための経営基盤です。つまり、6つのマテリアリティは並列のテーマではなく、りそながどこで成長し、どのような力でそれを実現していくのかを示す、経営の設計図であると捉えています。
重要なことは、マテリアリティを掲げること自体ではなく、それを日々の事業判断や経営管理のなかで使い続けることです。
各領域で生じているお客さま・地域社会の課題を、どのような事業機会として捉えるのか。その機会を実現するために、どのような人財、データ、外部連携、リスク管理が必要となるのか。
今回のマテリアリティKPIには、新中計と連動するビジネス領域の指標も組み込みました。これらを通じて進捗を確認し、必要に応じて軌道修正していく。こうしてマテリアリティを経営管理のプロセスに組み込むことで、社会価値と企業価値の両立を、個別施策ではなく経営の仕組みとして前進させていきます。
社会課題を「金融+」の成長に変える
この経営の設計図を描くうえで、外部環境の変化は重要な前提となりました。金利環境や人口動態の変化、気候変動や自然資本、人権といった社会課題、生成AIやデータ活用の進展は、お客さまや地域社会の課題を大きく変えています。
これらを単にリスクとして見るのではなく、当グループが「金融+」として提供価値を広げる機会に変えるには、社会課題を事業の外側に置かないことが重要です。
私たちは、サステナビリティを環境・社会テーマへの対応としてだけではなく、お客さまや地域社会のこまりごとを起点に、新たな価値提供を構想する視点と位置づけています。これが、当グループにとっての「金融+」の実装であり、社会価値と企業価値を同時に高めるための基本的な考え方です。
「金融+」を実装するうえで重要なのは、既存の金融サービスに何かをつけ加えることではありません。お客さまや地域社会の課題を起点に、金融機能、信託機能、デジタル・データ、AI、地域ネットワーク、外部パートナーの力を組み合わせ、これまで分断されていた価値提供を一体として届けることです。個々の取り組みは異なっても、根底にある考え方は共通しています。お客さまの生活や事業のなかにより深く入り込み、課題の発見から解決、継続的な関係構築までを支えることで、過去を超える新たな価値創造のカタチをつくっていきます。
例えば、お客さまのSX推進支援は、環境対応そのものを目的とするだけではなく、新たな資金需要や地域経済の持続的な発展にかかわるテーマです。気候変動への対応も、リスク管理にとどまらず、お客さまの移行を支え、将来世代にわたる豊かな未来社会の実現に貢献する取り組みです。こうしたテーマを個別施策として切り出すのではなく、マテリアリティを通じて経営資源の配分や事業活動に結びつけていくことが、CSO、CSuOとしての重要な役割だと考えています。
執行と監督をつなぎ、意思決定の質を高める
同時に、新たな成長ステージに進むためには、挑戦と規律の両立が欠かせません。新中計では、コア事業のさらなる成長に加え、次世代成長ドライバーの創出、構造改革、資本循環の加速に取り組んでいきます。外部との共創やインオーガニック投資、データ・AIの活用など、従来以上に広がりのある挑戦が求められる一方で、その挑戦は、透明性と規律ある経営のもとで進められる必要があります。ここで重要になるのが、執行の戦略と取締役会による監督をより密接につなげていくことです。
今回、コーポレートガバナンス事務局の機能強化を目的に、代表執行役副社長が担当役員を務める体制となりました。これは、グループ戦略とコーポレートガバナンスの一体性を高め、取締役会や各委員会での議論を、執行側の戦略実行により的確に活かしていくためのものです。
新中計とマテリアリティの実行においては、成長投資、外部連携、人財・組織変革、サステナビリティ対応など、経営判断の複雑性が一段と高まります。
だからこそ、何を機会と捉え、どのリスクを取り、どのリスクを抑えるのかを、マテリアリティを軸に明確にしていく必要があります。私が担うコーポレートガバナンス事務局担当役員としての役割は、取締役会や各委員会での建設的な議論を執行側の意思決定に活かし、執行と監督の往復をより密にすることで、挑戦のスピードと経営の規律を両立させることです。ガバナンスを、持続的な成長につながる意思決定の質を高める仕組みとして、より一層活かしていきたいと考えています。
また、こうした取り組みは、財務・非財務の双方から企業価値を高めるうえでも重要です。ROEの向上に向けた成長戦略を着実に実行することに加え、マテリアリティに即した事業展開、サステナビリティへの取り組み、人的資本の強化、ガバナンスの高度化を通じて、当グループの持続可能性や成長可能性に対する理解を高めていくことは、資本コストの低減にもつながるものと考えています。サステナビリティを経営の中心に置くことは、非財務情報を充実させるためだけではなく、企業価値向上に向けた経営の質を高めることでもあります。
そして、マテリアリティを経営に実装していくうえで、最終的な起点となるのは人財です。どれほど戦略や制度を整えても、お客さまの変化に気づき、課題を捉え、解決策を考え、行動に移すのは従業員一人ひとりです。マテリアリティを実効性あるものにするためには、一人ひとりの行動変容を促し、企業文化そのものを変えていくことが不可欠です。
企業文化の変革を通じて人財戦略を次のステージへ
私が、新たな中期経営計画において掲げるテーマは、従業員の「行動変容・成長」です。
整った施策を並べるだけでは、企業文化は変わりません。一人ひとりの挑戦が実際に増え、その結果として人が成長し、組織が変わっているか。私は、その現実に真正面から向き合い続けるために、「行動変容・成長」を人財戦略の中心に据えました。
当グループには、人の良さやアットホームな社風、働きやすい環境・制度が整っているなどの強みがあり、ダイバーシティの取り組みなどでも一定の評価を得ています。
一方で、金融政策の正常化などにより業績が堅調に推移するなかで、従業員の主体性・当事者意識・挑戦志向が低下しつつあるという組織課題も感じており、この課題を克服すべく企業文化を変えていく必要性を認識しています。
お客さまの行動やニーズの多様化・高度化、テクノロジー革新の加速など、当グループを取り巻く環境は大きく変化しています。こうした環境下、これまでの発想や行動の延長線上では、持続的な価値創造は実現できません。経営戦略を着実に前進させていくためには、従業員一人ひとりの行動の変化が起点となり、その積み重ねとして企業文化が変わっていくことが重要であると考えています。
先ほどの組織課題は、リスクでもありますが、同時に機会でもあると捉えています。人財戦略では、「価値創造とWell-beingの持続的な好循環」を目指しています。これまで通り、6つのドライバーにおいて各種施策や人財投資を実施していきますが、従業員の「行動変容・成長」により組織課題を克服していくことを通じて、3つの柱の“共鳴”を加速させていきます。そして、その先には、「お客さま接点の変革」「ソリューション提案の高度化・多角化」「共創と挑戦の日常化」といったグループ全体での活動の変化が起こり、新中計にある「コア事業の成長」と「次世代成長ドライバーの創出」を力強く後押しできると信じています。
価値創造とWell-being向上を目指した人財戦略
当グループにとって「人財」は価値創造の原動力であり、経営戦略を支えるもっとも重要な財産です。私たちはこれまで、パーパス「金融+で、未来をプラスに。」と経営理念のもと、長期ビジョン「リテールNo.1」の実現に向け、「共鳴(Resona)」を起点とする人財戦略を推進してきました。
その土台には、「インテグリティ」「ダイバーシティ&インクルージョン」「変革への挑戦」という組織風土があります。これに基づき、6つのドライバー(リーダー、越境、専門性、自律と支援、働きがい、働きやすさ)に沿った施策を着実に積み重ねてきました。あわせて、人財への投資も拡充し、採用・育成・処遇・働く環境の整備などを通じて、従業員一人ひとりが持てる力を最大限発揮できる基盤づくりを進めてきました。
人財投資が目に見える効果を出すには一定の時間を要するものの、全体として着実に進捗しており、各ドライバーに基づく指標も概ね順調に推移しています。
また、従業員の状態を把握する指標として、マテリアリティKPIである「Well-being指数」を設定しています。これは従業員意識調査における「仕事と生活の充実度」のポジティブ回答割合であり、この数値も着実に上昇しています。
人財戦略で目指す「価値創造とWell-beingの持続的な好循環」は、新中計においても変わるものではありません。今後も、前中計を上回る規模で人財投資を実施していきます。加えて、従業員の「行動変容・成長」に向けては、目標設定・評価・処遇の在り方を一体として見直すとともに、マネジメント層が日常の組織運営のなかで実践し、組織全体の行動様式として定着させていきます。
また、従業員の意識・行動の変化を可視化する指標として「行動変容・成長スコア」を設定し、企業文化の変革の進展を継続的に確認しながら、取り組みの実効性を高めていきます。
変化の激しい時代にあっても、お客さま・地域社会に価値を提供していく起点は常に「人財」です。私は、「行動変容・成長」を起点とした企業文化の変革を進めるとともに、これまで積み重ねてきた人財戦略の取り組みをさらに深化させることで、両者を一体として前進させていきます。そして、「価値創造とWell-beingの持続的な好循環」を実現していきます。