りそなの原点

「りそな改革」のスタート

巨額の公的資金注入が決定したりそなグループは、JR東日本副社長であった細谷英二を会長とするなど外部からの社外取締役を招聘し、経営体制を刷新。りそなグループ再建に向けた経営健全化計画を公表するとともに、公的資金の注入を受けるに至った経緯や要因、それまでの対応の問題点について総括した。
新経営陣のもと、2005年3月期までの2年間を『集中再生期間』と位置付け、これまでの慣行や固定観念にとらわれない、「りそなの常識は世間の非常識」という目線を持って、新生りそなに向けた抜本的な改革をスタートさせた。

01公的資金注入を受けるに至った原因と教訓

りそなグループが預金保険法に基づく公的資金注入を受けるに至った原因調査については、新経営陣の下で2003年8月に内部調査委員会が設けられ、過去10年の経営の検証を通じて以下の通りまとめられた。

  • 他行との横並び意識から貸出金の量的拡大を指向し、特に系列ノンバンクの無統制な借り入れを抑制できず、グループ体力をはるかに超える借入金を発生させた。

  • バブル崩壊による不良債権の発生に対して抜本的な対策を講じることができず、問題を先送りし続けたため、与信費用や潜在的なリスクの増大を招いた。

  • 不良債権の抜本的処理を断行することなく、目先の自己資本比率の維持や公的資金の配当・返済原資の確保に主軸を置き続けるとともに、将来の財務リスクへの対応を先送りし続けた結果、脆弱な資産である繰延税金資産に依存した財務構造に陥った。

このような事態を招いた大きな要因のひとつは、自らの規模の拡大を優先する経営が続けられ、組織として、バブル崩壊後の社会の大きな変化に対応できなかったことがあげられる。その結果、信用リスクや資産価格の変動リスク等を含めた財務上のリスクやコスト及び資本の問題について、経営として十分な統制ができなくなり、企業として最も大切にすべき、お客さまからの信用と信頼を失うという事態に至ったといえる。

常に社会の変化に対応し、自ら変革に挑戦し、お客さまの信頼に応えていく、というその後のりそなグループの企業文化の原点は、この公的資金注入の教訓にある。

02ガバナンス体制の再構築

巨額の公的資金注入という事態を招いた背景には不良債権問題があったが、その根底にはバブル崩壊後の社会の大きな変化に対応できず、問題解決を先送りし続けてきたなどのガバナンスの機能不全の問題があった。このため、再生に向けた取り組みの要となったのが、ガバナンスの抜本的な改革であり、その具体策が、邦銀初となる委員会等設置会社への移行による、透明性の高いコーポレートガバナンス体制の確立だった。りそなホールディングスでは、委員会等設置会社への移行により、企業の意思決定機関としての取締役会が、社内出身の取締役を中心に運営される場から、社外出身の取締役が過半数を占める透明性の高い議論の場に変わった。また、ガバナンス(経営の意思決定・監督)とマネジメント(業務執行)が分離され、緊張感があり、透明性とスピード感ある経営体制が構築されることになった。

2003年6月に就任した細谷会長や社外取締役等計7名の外部からの経営者は、メーカーやサービス業など、出身業界も様々で、それぞれが豊富な経営経験を持つ多士済々のメンバーだった。公的資金の返済に向けた改革の諸施策が、銀行業界の枠にとどまらず、広くお客さまの目線を取り入れて議論され、再生に向けた改革の速やかな推進を後押しした。

細谷会長は、透明性の高い「ガラス張りの経営」を唱え、世の中やお客さまから評価され、自らも変化し対応する姿勢の重要性を強調した。一日でも早く公的資金を完済し、持続的な黒字経営を行う「自立」、そして自分たちの経営を自分たちで律することができる「自律」を目指したガバナンスのあり方は、その後のりそなの経営のバックボーンとなっていった。

03聖域なき財務改革 持続的な黒字経営への体質転換

新経営陣が最初に取り組んだのが、公的資金注入に至った原因となる財務内容の改革であった。「厳格に、うそをつかない、先送りしない」という基本方針のもと、りそなグループが財務上抱えていた(1)不良債権処理の遅れ、(2)過大な株式ポートフォリオ、(3)高コスト体質といった問題の根本的な解決のため、不良債権や保有株式などのリスク最小化と、リテール業務にふさわしい低コスト体質の実現により、持続的な黒字経営体質に生まれ変わることを目指した。具体的には、集中再生期間の最初の3か月である2003年9月中間期決算をターゲットに、(1)勘定分離による不良債権の処理促進、(2)ゼロベースでの株式持ち合い見直し、(3)関連会社・緊密先取引の見直しと関係会社の集約に着手した。

財務改革では、最終的には集中再生期間の期日である、2005年3月末時点で以下のような成果を実現した。

2005年3月末までのりそな集中再生期間における財務改革の成果

これらの聖域なき財務改革により、「持続的な黒字経営への体質転換」を実現させ、現在にも続くりそなの財務基盤を確立させた。