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CEOメッセージ

取締役兼代表執行役社長兼グループCEO 南 昌宏の写真 タイトル 躍進 取締役兼代表執行役社長兼グループCEO 南 昌宏の写真 タイトル 躍進

取締役兼代表執行役社長兼グループCEO

南 昌宏

2024年度は、金融界にとって歴史的な転換点となりました。日本銀行によるマイナス金利政策の解除により、「異次元の金融緩和」に終止符が打たれ、緩やかなインフレを前提とする新しい世界が動き始めています。少子高齢化や生産年齢人口の減少、脱炭素社会への流れといったメガトレンドに加え、生成AIなどテクノロジーの圧倒的な進化は、様々な領域に影響を及ぼし始めています。さらに、日本の再成長に向けては、新しい産業や成長企業の育成、そして地域社会の活性化など数多ある課題を金融、非金融の両面でどのように支えていくのかが問われる重要な局面を迎えています。こうしたなか、我々は、これまでの価値観や常識に過度にとらわれることなく、次世代を見据えて、柔軟かつ迅速に変化に適応していく力が求められています。

ただ、変化は決して脅威ではなく、新たな機会と挑戦の始まりです。2025年度は、現行の中期経営計画の最終年度にあたります。私はグループの3万人の全役職員に向けて、「躍進」という言葉を伝えています。そして、「変革と挑戦」をキーワードに、「躍進」をテーマに、りそなグループを次のステージへ押し上げたいと考えています。「稼ぐ力」を再び取り戻すとともに、金融政策の転換が図られるなかで、次世代を見据えた構造改革を一気に加速させていきます。この1年を、リテールNo.1への確かな一歩とすべく、グループをあげて取り組んでまいります。

トップの責任

事業環境変化が進むなかで、私が経営トップとしてもっとも大切にしている責任は、「変化を見据え、未来を切り拓くこと」であると考えています。そして、りそなグループを次のステージへと導くために、3つの視点を重視しています。

1点目は、時代認識です。銀行界はいま、金融政策の転換、金融と非金融の融合、業界の垣根の融解やテクノロジーの急速な進化などによって、新たな競争環境に直面しています。不透明・不確実で、時に非連続な変化が常態化するなか、お客さまの金融行動は変化し、こまりごとやニーズも多様化・高度化・複雑化の一途を辿っています。こうしたなか、我々のビジネスの根幹は、変化するお客さまのこまりごとを満たし続けることにあります。だからこそ、変化を新たな成長機会と捉え、常に学び続けること、いち早く変化に適応していくことが唯一の勝ち筋だと考えています。グループの全役職員が、もう一度グロースマインドを呼び起こし、固定観念を捨てて、変化を乗り越えていく時であると考えています。

2点目は、役職員とのベクトルの共有です。2023年に制定したりそなグループのパーパス「金融+で、未来をプラスに。」は、金融の枠を超えた価値創造を通じて、社会の持続可能な発展に貢献するという強い決意を示すものです。企業のパーパスは、企業活動の起点であり、同時に目指すべき最終目標(終着点)でもあります。重要なのは、グループのパーパスと役職員一人ひとりの価値観や想いが交わる部分、その一致点を探し続けることだと考えています。そのために、これからも「3万人のマイパーパス・プロジェクト」を愚直に進めていきます。パーパスの実現は終わることのない挑戦であり、これをグループのさらなる成長に向けた礎としていきたいと考えています。

取締役兼代表執行役社長 南 昌宏 写真

3点目は、ガバナンスと信頼です。「りそなショック」の真因は、コーポレートガバナンスとリスクマネジメントにあったと認識しています。だからこそ、我々は、いかなる状況にあっても、透明性の高い経営を徹底し、ステークホルダーの皆さまから信頼される存在であり続けることを重視しています。りそなホールディングスは、指名委員会等設置会社として、取締役会については10名中7名が独立社外取締役で構成されており、経営の透明性と客観性を担保する仕組みが整備されています。取締役会では多様な視点から活発な議論が交わされ、グループガバナンスの実効性向上や内部統制の強化に真摯に取り組んでいます。そして、これからも、お客さまのこまりごと、社会課題の解決を起点に、深くビジネスを考え抜き、何よりもお客さまから信頼される金融グループとしての責任を果たしていきたいと考えています。

取締役兼代表執行役社長 南 昌宏 写真

持続的な企業価値向上に向けて

2024年度は、PBR(株価純資産倍率)が9年ぶりに1倍を回復し、時価総額も3兆円を回復した1年となりました。株価の推移を含め、りそなグループへの期待は着実に高まっています。しかしながら、我々が掲げる「リテールNo. 1」の実現には、乗り越えなければならない課題がまだ数多く残されています。持続的な企業価値向上の観点では、「ROEの向上」と「資本コストの低減」、この両輪での取り組みが市場評価としてのPBRの向上に直結するものと考えています。

まず、ROEの向上については、「稼ぐ力」の再興が不可欠です。資金利益とフィー収益の双発、2つのエンジンによるトップラインの拡大を通じてROAを高めます。リアルとデジタルが高次元で融合する次世代型モデルへの転換を着実に図りながら、同時に、プロセス改革や社内DXを加速させることで、顧客体験の革新と生産性の飛躍的な向上の両立を目指します。そして、資本活用フェーズにおいて、インオーガニック投資を含めた資本の好循環を軌道に乗せ、ROEの持続的な向上を目指していきます。

資本コスト低減の観点では、不確実性が極まる時代において、リスクを適切にマネージしながら、高い期待に応えるべく、安定的で質の高い収益構造の構築を目指します。また、「リテールのお客さまのSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)にもっとも貢献する企業」を目指し、ESGへの取り組みについてもさらなる強化を図っていきます。なお、今年度から東証基準に基づくROE目標の開示をスタートさせました。これは、投資家の皆さまとの対話を通じて、当該基準での開示を求める声にお応えしたものです。今後も、ステークホルダーの皆さまの声を真摯に受け止めながら、財務・非財務の両面からの情報開示を拡充し、透明性と信頼性の高い経営を実践してまいります。

ROE向上と資本コストの低減を通じて、企業価値を高めていくことについて記載した図。図の内容は本文で説明しています。

「稼ぐ力」の復活 ~双発ビジネスの展開~

まずは「稼ぐ力」の復活です。ここで申し上げている「稼ぐ力」とは、もちろん単に収益を極大化するということではなく、お客さまのこまりごと、社会課題の解決を起点に「正しい利益」を獲得していく力です。これは、お客さまの最善の利益とともにあり、りそなグループの存在意義とも共鳴するものです。そのうえで、この稼ぐ力を支えるのが、2つのエンジンによる双発です。1つ目のエンジンは、金利が戻るなか、間接金融の本丸である預貸金ビジネスと有価証券運用の強化です。りそなグループが持つ粘着性の高い安定的な預金基盤という本源的な強みを最大限に活かしながら、資金利益の着実な向上を目指します。もう一つのエンジンは、低金利下で磨いてきた多彩なフィー収益です。中長期的な視点をもって新しいビジネスを投入し、リアルとデジタルの融合を通じて積み重ねてきた新たな成果が、4期連続でのフィー収益の過去最高益の更新を下支えしており、次世代の新たな収益基盤の礎となっていきます。

まずは、金利上昇の恩恵をしっかりと取り込みながら、中長期的な目線をもって金利に過度に依存しない、次世代の収益のベストミックスを追求し続けることが重要だと認識しています。

双発によるビジネスの展開で「稼ぐ力の」復活を目指すことを示した図。図の内容は本文で説明しています。

構造改革

これまでのりそなグループの再生と成長を支えてきた現行の仕組みや業務プロセスですが、足元の急速な事業環境変化を踏まえると、次世代のリテールビジネスを支える新たな発想、仕組みや業務プロセス、システムなどへの移行が不可欠な状況にあります。これこそが構造改革の背景であり、我々が乗り越えなければならない大きな壁の一つです。

現中期経営計画の3年間は、「構造改革に取り組む最初の1,000日」と位置づけています。「フロント改革」「ミドル・バック改革」「人的資本投資」「ワークスタイル変革」という一連の改革を通じて、グループを支える成長基盤の再構築、リテールに内在する高コスト性の打破を目指しています。りそなグループの経費率は、2025年度にようやく50%台となる見通しですが、双発による収益拡大と構造改革を通じて、5年以内に40%台を目指していきます。

「グループ成長基盤の強化」と「リテールに内在する高コスト構造の打破」に向けた取り組みの概要の図。図の内容は本文で説明しています。

まず、フロント改革では、リアルとデジタルが融合するお客さま接点の変革を進めています。日常の金融は、100%デジタルでつながり、深いコンサルティングを起点とする特別なリアルの瞬間が差別化を生み出していきます。そのためには、リアル側、デジタル側双方の強化と連携が不可欠です。具体的には、リアル側のデジタル武装化、コンサルティング能力やファイナンス能力のさらなる向上に加え、デジタル側での顧客体験の革新と新たな価値提供力の向上が同時に必要となる局面を迎えています。

お客さまとの接点の拡充は、お客さまのこまりごと、社会課題の解決をビジネスのすべての起点と捉えるりそなグループにとっての生命線です。リアルサイドから得られる高密度の情報、デジタルサイドから獲得する広範囲・高頻度のデータが、お客さまの解像度を上げるとともに予測の精度を高めていきます。こうしたデータの利活用などを通じて、One to Oneでの提供価値をさらに磨くことで、お客さまから選ばれ続ける金融グループを目指していきます。

ミドル・バック改革では、2025年1月、みなと銀行の事務・システム統合が完了し、グループのワンプラットフォーム化の土台が完了しました。今後は、ワンプラットフォーム・マルチリージョナル戦略のさらなる進化に向けて舞台裏の一本化を目指します。コンセプトは、シンプルであることです。今後、DXやAIを活用したBPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)を進め、グループ内のミドル・バック組織のスリム化を加速させていきます。

ワークスタイル変革では、これまで遅れがちだったインナー投資にも本格的に着手しています。慣れ親しんだ業務プロセスと決別し、聖域を設けることなく業務の断捨離を図るとともに、生成AIの標準装備化を一気に進めます。一人ひとりのミッションを再定義し、人財ポートフォリオを組み換え、個々人の能力を拡張しながら、その総和としての組織能力の拡充を目指します。

このような新しい挑戦が、お客さまへの価値提供力を引き上げ、圧倒的な生産性の向上をもたらすことで、グループの持続的成長を支えていきます。挑戦することの価値を役職員全員で共有しながら、大きな躍進を目指したいと思います。

デジタルとリアルの融合を通じてお客さまへ価値を提供していくことを表した図。

企業価値を高める資本循環の加速

りそなグループは、2015年の公的資金完済後も、資本の質的・量的拡充を進めてきましたが、現中期経営計画のスタート時点である2023年に、CET1比率(バーゼル3最終化・完全実施ベース、その他有価証券評価差額金除き)が10%を超え、いよいよ資本の活用フェーズに入りました。今後も、健全性を重視しつつ、オーガニック、インオーガニック両面からの成長投資、そして株主さまへの還元拡充に取り組み、グループの企業価値向上に資する新たな資本循環構造の構築を目指していきます。

こうしたなか、2025年5月、事業環境の変化を踏まえ、株主還元方針の一部をアップデートしました。総還元性向目標「50%程度」は維持しつつ、新たに配当関連の指標として2029年度のDOE(純資産配当率)目標を「3%程度」に設定しました。詳細な説明は、CFOメッセージに委ねますが、これまでの自己株式取得に力点を置いた還元に加え、今後は安定的なペースでの増配の実現にも注力していきます。引き続き、利益成長を着実に図りながら、自己株式取得の拡大による発行済株式数の適正化を通じて、「EPSの持続的拡大」に取り組んでいきます。

成長投資については、金利が戻るなか自然な流れとして、まずは、良質な貸出金を中心とするオーガニック領域への投資が先行していますが、一方で、次世代における収益のベストミックスの構築に向けた新たな局面に差し掛かっていると考えています。多様化・高度化するお客さまのニーズを適切にスピーディに満たし続けるためには、今後も、異業種を含めた外部の知見やネットワークと積極的につながり、資本も活用した戦略的提携などを通じて、新たな収益機会を獲得していくことが必要であると認識しています。

資本マネジメントの概要の図。図の内容は本文で説明しています。

リテールのお客さまのSXにもっとも貢献する企業

りそなグループは、リテールのお客さまのSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)にもっとも貢献する企業を目指し、常に伴走型でお客さまのSXをサポートしてきました。これは、単なる金融サービスの提供にとどまらず、社会課題の解決や地域の持続可能な発展に寄与するという、りそなグループの存在価値を体現する取り組みでもあります。サステナビリティ長期指標として、「お客さま・社会にとっての価値」「環境価値」「社会価値」「従業員にとっての価値」といった多面的な視点から、2030年度に目指す水準を掲げて、ESGそれぞれの領域での取り組みを強化しています。具体的な施策については、CSO/CSuOメッセージ (PDF:1.27MB)CHROメッセージ (PDF:1.35MB)に譲ることとしますが、私からは、S(社会)の領域における、人的資本投資と地域活性化への取り組みに関して、強い意志を持って推進していることをお伝えできればと思います。

人的資本投資

我々を取り巻く事業環境は、目まぐるしく変化しています。こうした変化に適応し、次世代の競争力を高めていくためには、従業員一人ひとりが持つ能力を最大限に引き出すとともに、グループ全体の力を結集することが不可欠です。現在、一人当たり人件費は人財戦略の推進に伴って上昇していますが、それを上回るペースで一人当たりコア業務純益が増加しており、人的資本への投資が着実に成果を生み出す状況にあります。また、りそなグループの役職員一人ひとりに、グループのパーパス「金融+で、未来をプラスに。」から連なるマイパーパスの実現、お客さまへの想い、仕事のやりがい、成長の実感といった報酬以外の大切な価値にも、これまで以上に目を向けてほしいと伝えています。報酬を通じた充実感に加えて、自ら学び挑戦を続ける人、お客さまに優れた価値を提供できる人、グループの変革を牽引していく人が、よりモチベーションを高められる人事制度・運営を目指していきます。

一人当たり人件費とコア業務純益のグラフ。2025年3月期の実績は、それぞれ、9.9百万円、7.2百万円で、2026年3月期の計画は、11.5百万円、7.4百万円。

2025年度は、経営職層向けに株式給付信託を導入することを決定しました。これは、次世代を担う人財が、経営参画意識をさらに高め、株主の皆さまと同じベクトルで中長期的な企業価値向上に向かうことを企図したものです。人的資本への投資は、りそなグループの持続的成長を支える礎であり、変化の激しい時代において、お客さまに選ばれ続ける金融グループを目指すための重要な要素です。3万人の役職員と「挑戦することの価値」を共有しながら、次世代リテールのフロントランナーを目指していきたいと考えています。

一人当たり人件費とコア業務純益のグラフ。2025年3月期の実績は、それぞれ、9.9百万円、7.2百万円で、2026年3月期の計画は、11.5百万円、7.4百万円。

地域社会発展への貢献、ワクワクする未来の創出

2024年7月、「B.LEAGUE(国内男子プロバスケットボールリーグ、以下Bリーグ)」のタイトルパートナーに就任しました。2015年に発足したBリーグは、変革・挑戦をキーワードに、困難な道を乗り越えて前進を続けています。また、地域の活性化や地域創生に強い想いを持って活動されていることなど、りそなグループのこれまでの歩みや理念とも通じる部分が多く、同じ志を共有することができるBリーグとの出会いは、我々にとって素晴らしい機会となりました。また、グループ3万人の役職員が仕事を超えて一つになれるもの、そして、我々が新しいチャレンジに向かうための一つの象徴を見つけることができたと感じています。

スポーツは地域コミュニティを結びつけ、人々に活力と希望を与える力を持っています。我々も、地域の皆さまがスポーツを通じてつながり、活気あふれる社会を築いていくための様々なお手伝いをさせていただきたいと考えています。すでに全国各地のクラブチームと当社グループ銀行との間でビジネスマッチング契約を締結させていただくなど、ビジネス面でのシナジー効果も発現し始めています。また、今年で20年の節目を迎える金融経済教育「りそなグループキッズマネーアカデミー」においても、Bリーグとのコラボレーション企画を展開しています。これは、地域の未来を担う子どもたちに「金融+」の価値を届ける取り組みでもあります。

我々は、Bリーグとの協賛にあたり、「JOIN THE HOPE ワクワクできなきゃ、未来じゃない。」というシンボルワードを掲げました。これからも、りそなグループのパーパス「金融+で、未来をプラスに。」と重ね合わせながら、地域社会の活性化とワクワクする未来の実現に貢献してまいります。

Bリーグの島田チェアマンとりそなホールディングス社長の南が一つのボールを中心に左右に立って一緒に持っている写真。

おわりに

我々りそなグループには、「120年を超えるリテールの歴史と実績」があります。これまでの長い歴史のなかで培ってきた強みを最大限に活かし、「お客さまの喜びがりそなの喜び」という基本姿勢をぶらすことなく、これからも新たな進化を目指します。

また、我々には、「変革のDNA」が息づいています。これまで幾度となく困難を乗り越えてきた歩みが、我々の礎であり、未来を切り拓いていくための力の源泉でもあります。そして、不透明・不確実な時代にあって、次世代への希望を生み出し続けることが、我々の使命だと考えています。だからこそ、変化を恐れず、そして金融の枠にとどまることなく、新たな挑戦を続けます。

そして、これからも、3万人の全役職員とともに、「ワクワクする未来」の創出に向けて弛まぬ努力を重ねてまいります。これからのりそなグループに、ぜひご期待ください。