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気候変動への対応(TCFD)

りそなホールディングスは、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の趣旨に賛同し、推奨されたフレームワークの整備と気候関連の財務情報開示に適切に対応していきます。

ガバナンス

気候変動への対応は、サステナビリティへの取り組みの重要な要素として、少なくとも年1回以上取締役会へ報告を行い、重要な事案については随時付議を行うことで、適切な監督が図られる体制を整えています。
社外取締役が過半数を占める取締役会では、多角的な視点から議論が行われ、その結果はグループの経営戦略やリスク管理、開示に反映されています。
より具体的なサステナビリティに関する重要事項は、りそなホールディングスの社長を委員長とし、グループ銀行の社長、経営管理部署、リスク管理部署、法人・個人の営業部門などの担当役員、りそなアセットマネジメントの社長などが出席する「グループサステナビリティ推進委員会」において一元的に推進・管理しています。
同委員会では外部の有識者より取り組みの方向性、スピード感などについて様々なご意見をいただき、経営陣の議論に反映しています。

経営戦略

気候変動がビジネスに及ぼす機会とリスク

不確実性の高い気候変動の影響を捉えるため、「1.5℃」と「4℃」の2つのシナリオを用いて機会とリスクを定性・定量両面から評価しています。
評価に際しては、「短期:5年程度」「中期:15年程度」「長期:35年程度」の時間軸を設定して影響を受ける時期を想定しています。

1.5℃シナリオ

【参照した主な公的シナリオ】

IEA Net-Zero Emissions by 2050およびIPCC RCP2.6シナリオなど

4℃シナリオ

【参照した主な公的シナリオ】

IPCC RCP8.5シナリオなど

●TCFD提言の定義を踏まえたエネルギーセクターおよびユーティリティーセクター向けの貸出が、ポートフォリオ全体に占める割合※1

2020年3月末 2021年3月末 2022年3月末 2023年3月末
1.3% 1.2% 1.2% 1.3%
  • ※1貸出金、支払承諾、外国為替などの合計(りそな銀行、埼玉りそな銀行、関西みらい銀行、みなと銀行の合算)

気候変動シナリオ分析(定性)の深掘り

エネルギーセクターおよびユーティリティーセクター向けの 貸出がポートフォリオ全体に占める割合は大きくないと考えら れるものの、気候変動リスクは幅広い業種に影響を及ぼし、業 種ごとに影響内容や程度、時期が異なると認識しています。
このことを踏まえ、気候変動の影響を受けやすいとされる業種※2の潜在的な影響度と、当グループのポートフォリオに占める割合を踏まえた「重要セクター」を選定し、当該セクターに対する定性シナリオ分析の深掘りを実施しています。

重要セクターの選定プロセス

セクター別気候変動影響度調査 「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」「国連UNEP-FI」「SASB」などの情報を参考に、気候変動の影響を受けやすいとされる業種※2を対象とした気候変動影響度を調査
セクター別ポートフォリオの反映 各業種が当グループのポートフォリオに占める大きさを追加
重要セクターの選定 上記の結果を踏まえ、重要セクターを特定
セクター 気候変動影響 ポートフォリオの大きさ※3 選定結果
不動産・建設 重要セクターに選定
自動車・運輸 重要セクターに選定
エネルギー 重要セクターに選定
素材 非選定※4
農業・食料 非選定
紙パルプ・林業製品 非選定
銀行・生損保 非選定

重要セクターごとのシナリオ策定、気候変動リスク推移の定性評価

選定した重要セクターごとにシナリオを策定し、気候変動影響が発現する時期と大きさについて定性評価を実施しました。

  1. 1.リスクと機会の重要要素の設定
「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」「国連UNEP-FI」「SASB」などの情報を参考に、各セクターにおけるリスクと機会に影響が大きいと考えられる重要要素を調査、選定
  1. 2.将来の社会像とセクターへの影響を想定
選定した重要要素について、IEAなどの客観性の高い科学的パラメータから影響の発現時期、インパクトの大きさを想定。5フォース分析※5に組み入れ、将来の社会像とセクターへの影響を想定
  1. 3.シナリオ策定定性評価の実施
一定のシナリオを仮定し、各セクターの気候変動リスク推移を評価

各セクターにおけるリスクと機会の重要要素

不動産・建設 自動車・運輸 エネルギー
政策 炭素税の導入・引上 炭素税の導入・引上 炭素税の導入・引上
法律 建築物環境性能の強化 GHG排出規制の強化 GHG排出規制の強化
市場 環境性能の高い建物への顧客ニーズのシフト エネルギー価格の上昇 再生可能エネルギーの普及
評判 顧客の環境配慮意識の向上
技術 電気自動車への転換
急性 水害などの被害増加 激甚災害による操業影響 防災対応強化費用、物損被害の発生
慢性 (運輸)線路の熱膨張被害、冷房費の上昇

将来の社会像とセクターへの影響

(不動産建設)

将来の社会像 セクターへの影響
1.5℃ カーボンニュートラルが大きく推進、炭素税が導入され、建築物の低炭素建材・再エネ導入が普及 環境負荷の低減を意識した施設の建設が加速
4℃ 物理的リスクが高まり、防災性能の高い建築物の需要が高まる 水害などに備えた防災性能の高い施設の建築が進む一方、異常気象による損害・防災コストは増加

(自動車運輸)

将来の社会像 セクターへの影響
1.5℃ カーボンニュートラルが大きく推進、炭素税が導入され、再エネやEV車が普及、輸送ではモーダルシフトが加速 カーボンニュートラルに向けて、環境配慮型車両・鉄道車両の拡大、モーダルシフトが加速
4℃ 低炭素化は成り行き水準にとどまり、物理的リスクが高まる 従来の市場環境が維持される一方、異常気象による損害・防災コストは増加

(エネルギー)

将来の社会像 セクターへの影響
1.5℃ カーボンニュートラルが大きく推進、炭素税が導入され、再エネの導入・利用が普及 カーボンニュートラルに向けて、再エネの導入拡大が加速
4℃ 依然として化石燃料に依存し、物理的リスクが高まる 化石燃料の需要は堅調に増加する一方、異常気象による損害・防災コストは増加

気候変動リスクの推移

気候変動リスクの推移
重要セクター 移行リスク:1.5℃シナリオ 物理的リスク:4℃シナリオ
不動産・建設 2040年にエネルギー原単位の低下を受けたコスト増と、ZEB需要増加による収益増が相殺すると想定し、低リスクで推移 2030年に洪水被害額が約2割増加すると想定し、以降高リスクで推移
自動車・運輸 2030年に炭素税、法規制によるエンジン搭載車(ICE)の大幅需要減を想定し中リスク、2030年代に国内でICEの新規販売規制を想定し、環境配慮型車両の需要がカバーしなかった場合は2035年以降高リスクで推移 2030年に洪水被害額が約2割増加することを想定し、以降中リスクで推移
エネルギー 2030年に炭素税、炭素排出削減目標、エネルギーミックスにおける化石燃料の削減を想定し、以降高リスクで推移 2030年に洪水被害額が約2割増加することを想定し高リスク、2040年に原油価格が約3割上昇することを想定し、収益増加により中リスクに転換
  • ※2当社の業種区分では、「エネルギー」「自動車・運輸」「素材」「紙パルプ・林業製品」「農業・食糧」「不動産・建設」「銀行・生損保」
  • ※3「大」:5兆円超、「中」:1兆円~5兆円、「小」:1兆円未満と区分
  • ※4素材の種類により、リスク特性が異なりポートフォリオがさらに分散されることから選定せず
  • ※5「売り手」「買い手」「新規参入者」「代替品」が「業界」に及ぼす影響を分析する手法。すべてに影響するもう1つの要素として「政策」を加味

気候変動シナリオ分析の深掘り(定量)

定性分析の結果を踏まえ、移行リスク、物理的リスクそれぞれについて、当社財務影響の定量分析を実施しました。

移行リスク(1.5℃シナリオ)

移行リスクは与信先の業種ごとに特性や影響度が異なること、企業の今後のカーボンニュートラル対応にも左右されると考えられることから、分析対象は定性分析で選定した重要 セクターを対象としました。
またシナリオの前提とする重要なリスク要素は各セクターに共通する「炭素税の導入・引上」とし、公的シナリオを参考に1.5℃下での与信先企業への将来影響等を想定、2050年までの当社の信用リスク影響を推定しました。

分析対象 重要セクターすべて(不動産・建設、自動車・運輸、エネルギー)
シナリオ前提 炭素税の導入・引上げに伴う与信先企業の追加費用発生、および企業の今後のカーボンニュートラル対応を踏まえた当社の信用リスク影響を推定
使用シナリオ IEA Net-Zero Emissions by 2050およびIPCC RCP2.6シナリオ
分析期間 2050年まで
リスク指標 増加が想定される与信関係費用
分析結果 2050年までの与信費用増加額は、最大810億円程度

物理的リスク(4℃シナリオ)

物理的リスクは与信先の業種ごとの特性だけでなく、企業や当社担保物件の所在地にも左右されると考えられることから、分析対象は一般事業法人全体としました。
またシナリオの前提とする重要なリスク要素は、利用可能なデータの制約から、急性リスクが顕在化することによる水災被害とし、公的シナリオを参考に4℃下での与信先企業の業績影響、当社担保物件への影響を想定、2050年までの当社の信用リスク影響を推定しました。

分析対象 一般事業法人全体
シナリオ前提 急性リスクが顕在化することによる水災の発生頻度、被害増加をハザードマップ、自然災害モデルから想定し、与信先企業の業績、当社担保物件への影響を踏まえた信用リスク影響を推定
使用シナリオ IPCC RCP8.5
分析期間 2050年まで
リスク指標 増加が想定される与信関係費用
分析結果 2050年までの与信費用増加額は、累積で最大180億円程度

日銀による「気候変動対応を支援するための資金供給オペレーション」に対応した投融資

りそなグループは、日本銀行の「気候変動対応を支援するための資金供給オペレーション」に対応した投融資を提供しています。
国内の気候変動対応に資する投融資と判断するにあたっての基準および適合性の判断のための具体的な手続きについては下記をご覧ください。

気候変動対応オペにかかる対象投融資に関する基準および適合性の判断のための具体的な手続きの開示

リスク管理

りそなグループでは、気候変動リスクを当グループに重大な影響を及ぼす可能性があるトップリスクの一つとして認識し、トップリスクをリスク管理の起点とした一貫性のあるリスク管理体制を整備しています。
トップリスクは、経営会議、取締役会等での議論を踏まえて決定され、トップリスク管理を通じて、当グループ内のリスク認識を共有化し、リスクガバナンスの強化、重大なリスクの発生防止、リスクが発生した場合の早期対応・影響拡大の抑制などに努めています。
また、気候変動リスクを「将来の不確実性を高める要素」と捉え、リスクの特性に応じて信用リスク、オペレーショナルリスク、レピュテーショナルリスクなど、既存のリスクカテゴリーごとのリスク管理体制に取り組んでいます。
特に影響が大きいと考える信用リスクについては、下記の「社会的責任投融資に向けた取り組み」などを通じてリスク管理の強化を図るとともに、金融の役割を通じてカーボンニュートラル社会を実現していくための体制を整備しています。

指標・目標

りそなグループでは、気候変動リスクを低減し、機会を伸ばすための長期的な取り組みのターゲットとして、2021年に「サステナビリティ長期目標」を定めました。また、2023年5月には、投融資ポートフォリオがもたらす温室効果ガス排出量(Scope3カテゴリ15)について、2050年までに実質ゼロを目指すことを宣言するとともに、電力セクターに対する中間削減目標を公表いたしました。

カーボンニュートラル目標Scope1,2

項目 目標 2022年度実績
当グループのエネルギー使用に伴うCO2排出量(Scope1+2) 2025年度までに2013年度比▲70%
2030年度までに実質ゼロ
40,770t-CO2
(2013年度比▲56.2%)
 上記のうち、Scope1 2025年度までに2013年度比▲40% 5,079t-CO2
(2013年度比▲39.7%)
 上記のうち、Scope2 2025年度までに2013年度比▲80% 35,691t-CO2
(2013年度比▲57.8%)

投融資ポートフォリオの温室効果ガス排出量削減目標

項目 目標 2022年度実績
投融資ポートフォリオの温室効果ガス排出量(Scope3カテゴリ15) 2050年度までに実質ゼロ
 うち電力セクター:炭素強度 100~130gCO2e/kWh 139gCO2e/kWh

リテール・トランジション・ファイナンス目標

項目 目標 2022年度実績
リテールのお客さまの意識・行動のトランジションに向けて、現在地からの着実な前進に資するファイナンス
  • 環境分野以外も含む
2020~2030年度までの累計取扱高10兆円 1兆198億円
(うち環境分野3,035億円)

それぞれの目標の内容、これまでの進捗、今後の取り組みについては、それぞれのリンク先をご参照ください。